アスファルトの道路がまるで海のように波打ち、いたるところで車が乗り捨てられていた
倒れた電柱によって電線が大きくたわんでいる。街を歩いていると、ちぎれた電線の切れ端が頭に触れそうになり、恐怖を感じた

 破壊の限りが尽くされた光景を前にすると、はたして輪島が復興する日はやって来るのか、正直不安をおぼえる。前出の火災現場で出会った男性(62)は、「以前から人口がどんどん減り、高齢化も進んでいたのに、もう一度輪島に家を建てようと思う人はどれくらいいるのだろう」と嘆いていた。

日常の姿も

 だが、街の様子に目をこらすと、日常を取り戻そうとする人々の“営み”もあった。

 大きな段差ができて徐行運転でしか進めなかった道路は、作業員が夜通し工事したのか、翌日には砂利でならされ、スムーズに走れるようになっていた。

 朝、川沿いの亀裂だらけの土手には、非常時でもいつもどおり犬の散歩をして、フンを片付けている市民の姿があった。

 市役所の庁舎では、近くの避難者に「よかったら食べますか?」とおせんべいを差し出したり、カップ麺にむせた高齢女性の背中をトントンとさすったり、みなで助けあう様子が印象的だった(市役所庁舎の避難所機能は5日までで終了し、避難していた人々は既に別の避難所に移っている)。

 震災直後から、自分にできることをやり、少しでも前を向こうとする人々がいた。その「人間の強さ」が、今後被害の全貌が明らかになり、厳しい現実に向き合うことになるかもしれない輪島市の希望になることを、信じたいと思った。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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