開腹、腹腔鏡、ロボットのどの方法でおこなうかは、がんの進行状態やがんのある場所などによって判断されます。がんが大きな血管の近くにある、浸潤が広がっている、など難しくリスクが高い症例の場合には、開腹手術が選択されることも多くあります。

 大きながんや浸潤、他の臓器への転移などがある場合には、手術の前後に免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬などによる薬物治療がおこなわれることもあります。

手術方法は主治医とよく相談して

 もし腎がんと診断されて手術を受けることになった場合には、自分自身の仕事や生活、手術後の人生を考え、主治医とよく相談して部分切除か全摘かを決めることが大切です。

 部分切除では切り取った部分以外は残るため、片側の腎臓すべてを取ってしまう場合に比べて腎臓の機能を温存できるというメリットがあります。しかし、がんができた場所などによっては、縫い合わせたところからの尿漏れや出血など合併症と呼ばれる症状が起きることがあります。一方、全摘の場合はそれらの合併症の可能性は低いですが、腎臓が一つだけになるので機能の低下は避けられません。

 腎臓の機能低下が進むと、血中の老廃物や塩分などを十分に排出できずに腎不全を起こし、最終的には人工透析が必要になる場合があります。

 自分のがんでは、どの程度合併症が起きる可能性があるのか、仕事や生活の支障になるか、また腎機能の低下の可能性などを医師に相談し、きちんとした説明を受けた上で納得して手術を受けることが重要です。もし、十分な説明がない場合や相談ができない場合には、他の病院に診断を求めるセカンドオピニオンを考えても良いでしょう。

治療後も定期的に検査を受け、再発を予防する

 早期に見つかった4㎝以下の腎がんで部分切除をした場合、術後は定期的に病院でCTなどの検査を受ける経過観察になります。

「他のがんでは、5年以内に再発しなければ大丈夫、と言われることもありますが、腎がんの場合、4㎝以下の小さいがんでも時間が経ってから再発する可能性があります。ですので、5年経過後も経過観察を続けることがとても大切です。CTでなくても、胸部X線検査やエコーでも良いので、定期的なチェックを続けましょう」(中井医師)

 手術をした病院が遠くて通うのが大変な場合などには、地元の病院やクリニック宛ての診療情報提供書を書いてもらい、行きやすい医療機関で検査を受けるようにすると、通院の負担や労力を軽くすることができます。

(文/梶 葉子)