
そこで、杉山さんは同町での「玄関先までの避難訓練」をサポートしている。
「『玄関先に出るだけで訓練になるの?』と言われることもあります。ですが、東日本大震災のときには、屋内にいる方を救助するために部屋の奥まで入った救助者が巻き込まれて亡くなるケースがありました。それを防ぐためにも、まず玄関に出ることがとても有効なんです」
訓練の参加者は、「玄関まで来たから、その先の大通りまで出てみよう」と少しずつ避難に前向きになっていくという。
実際に災害が発生したときは、身近な人からの電話やLINEも避難の後押しになっている。だが、冒頭の女性の家族のように避難を嫌がるケースもある。そんなときは、「私のために逃げて」と訴え続けることが重要だ。
避難することが周りの支援者、助けに行く人の命を救うことになること。避難させられなかった後悔を生まないために、避難してほしいとメッセージを伝えていくこと。それが避難のスイッチを押すことになる。
「そして、『避難すれば迷惑かもしれない』というのは、発災から数時間後のことに限りません。これから何日も、あるいは何年も続く支援のなかで、迷惑かもしれないと不安になる必要はない。各自治体や企業が支援物資の援助を申し出ていますが、頼れるものはとことん頼っていくことも大事です」
(編集部・福井しほ)
※AERAオンライン限定記事