万博の建設費は1250億円と想定されながら、その後、1850億円、2350億円と2度も増額され、リングも180億円から344億円と2倍近い増額となった。

 11月29日の参院予算委員会で立憲民主党の杉尾秀哉議員は、

「リング1周360度で344億円。角度1度で1億円弱」

「角度1度が5メートル程度」という政府答弁を引き合いに、

「わずか5メートル1億円ですよ。法外だ。3分の1程度でできるという専門家もいる」

 と厳しく指摘した。

リングにせず点線で空間を設けた方がいい

 万博の建設問題について、SNSなどで発信し続けている建築エコノミストの森山高至氏に、現場で作業するAさんの見解を聞いてもらったところ、

「リングの作業員にそこまで特別なスキルは要求されません。その程度の建築物です。集成材に草花を植えるには、土と水が必要で、半年耐えるのが精一杯ではないでしょうか。途中からカビが生えてきたり、割れ目が出たりする可能性がある。N値がそんなに低いなら、万博会期中に不等沈下(地盤の状態や基礎の耐力不足などの理由で場所によって異なる沈下)する可能性があります。倒れることまではないだろうけど、応急措置が必要なくらいの危険性もあります。そういうことも考えると、すべてつなげたリングにせず、重機が入れるように点線で空間を設けた方がいい。リングの集成材を再利用するという話もありますが、木の再利用は簡単ではありません」

 と話した。

 吉村知事は、計画の変更はないとして、

「肌でリングを体感したい」「IRは1兆円規模の経済の起爆剤」

 と強気の発言を続ける。

 Aさんは風が吹きすさぶ寒い現場でこう話す。

「まだ万博まで1年半ありますから、現実を見た方がいい」

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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