役員会で発言する日本維新の会の馬場伸幸代表。右は藤田文武幹事長=10月11日、国会内

 日本維新の会が騒がしい。10月10日、事前の届けを出さずにロシアを訪問した鈴木宗男参院議員に対し、維新は「除名」を決定していたが、鈴木氏へ「通告」する段階で思わぬ“反撃”を受け、「離党」という扱いになった。不祥事の続く維新、トップのガバナンスが効いていないという指摘もある。

【表】今年度だけでこんなに…セクハラ、パワハラ、維新の主な不祥事はこちら

 鈴木氏は1~5日に、党への事前の届け出をせずにモスクワを訪れた。そして、ロシアの通信社が配信した動画で「ロシアの勝利、100%確信を持っている」などと発信したことがわかると、維新は「党の考えと違う」などとし、世論の反発も考え、鈴木氏を「除名」とする判断をした。

 10日、馬場伸幸代表らは処分を伝えるために鈴木氏と面会した。鈴木氏はその席で弁護士の同席を希望したという。

 馬場代表は、

「党の話し合いの場だ。私が仕切る。マスコミは出て行って」

 と発言。鈴木氏は

「私はオープンでいい、こんなことでは禍根を残す」

 と当初から荒れた話し合いに。

 最終的には、処分を伝える前に鈴木氏が離党届をその場で書き、馬場代表は鈴木氏の離党を認めることで落ち着いた。

党内では「自滅論」も

 この結果を知った維新の国会議員は、

「“不祥事のデパート”などとSNSで揶揄(やゆ)されるが、鈴木氏のことでまた騒がれそうだ」

 と話した。

 今春の統一地方選でも躍進し、解散・総選挙があればさらに議席を伸ばすのでは、との声も多い維新だが、最近の不祥事連発で党内では「自滅論」もささやかれているという。

 たしかに、不祥事が目立つ。今年だけでも司法が介入するケースが何件か起きている。

 今年6月、大阪維新の会の大阪府議、笹川理氏(42)が除名された。維新所属の大阪市議、宮脇希氏(36)に対し、セクハラやパワハラ、ストーカー行為をしたとの理由だ。その前月に維新府議団の代表に就任したばかりだった。

 宮脇市議は、9月に警察へ被害届を提出。2015年9月、支援者らとの会合後、笹川氏から性的な暴行を受けたといい、

「市議に当選したばかりの何もわからない時期で頼るしかなかった。(性的な暴行を受けた当時の)8年前と今とでは状況が違い、声をあげられなかった」

 と話している。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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役所では『先生』と持ち上げられ、会合では最前列の席に