近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師
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アトピー性皮膚炎はかゆみをともなう湿疹がよくなったり、悪くなったりを繰り返す病気です。その治療薬が近年、劇的に進歩しているといいます。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が解説します。

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 アトピー性皮膚炎(以下、アトピー)の治療は2018年から目まぐるしい進歩を遂げています。これまでは、ステロイド外用剤しか使えなかったことから、副作用の問題や重症の患者さんへの効果不十分例など、いつくかの問題を抱えていました。しかし、2018年にデュピクセントという注射薬が登場してから、アトピー治療は大きく進歩しました。今回は、最近登場した薬剤を中心に解説したいと思います。塗り薬、飲み薬、注射薬に分けて紹介します。

 まず、塗り薬に関してです。これまでアトピーには、ステロイド外用剤かプロトピック軟膏が主に使われてきました。ステロイド外用剤は適切に使えば大きな問題にはならないものの、長期の外用で皮膚が薄くなったりすることがありました。また、プロトピック軟膏は半数近くの人で塗った後のヒリヒリ感が気になり続けられないケースもみられました。これに対して、新しく登場した2種類の外用剤は全く作用機序が違うものです。

 まず、コレクチム軟膏。これはJAK阻害剤と呼ばれるものです。炎症細胞の中のシグナルであるJAKをブロックすることで、アトピーの炎症を抑制します。

 もう一つの外用剤は、モイゼルト軟膏です。モイゼルト軟膏も細胞内のシグナルをブロックするのですが、PDE4という別の分子に作用します。これらはステロイド外用剤が抱えていた副作用の問題がおきない、もしくはおきづらい点が特徴です。モイゼルト軟膏は生後3カ月、コレクチム軟膏が生後6カ月から使用可能なのも大きな利点でしょう。

 塗り薬だけで効果が足りない患者さんには、JAKをブロックする飲み薬が3種類使えます。

 JAK阻害剤であるオルミエント、サイバインコ、リンヴォックの3剤です。これらの薬剤は、皮膚の炎症だけでなくかゆみに対しても早い効果を発揮します。JAK阻害剤を内服して「かゆみのない世界をはじめて経験した」とおっしゃる患者さんもいます。かゆみだけでなくアトピーの湿疹病変にも効果を発揮します。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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注射薬も現在、3種類が使用可能