社会とバンドの共通点や違うところを考えるのは楽しい

――価値観を揺さぶられるような出来事があったときに、それを受け入れられるかどうかが大事ですよね。年齢を重ねると、どんどん難しくなるような気も……。

わかります(笑)。でも、「知らなかっただけでしょ」「間違えていただけでしょ」という話だと思うんですよ。「厳しく指導することが正しい」と思われていたことが今ではパワハラになったり、「僕は君を守る」ということがじつはパートナーを家庭に閉じ込めていただけだったとか、いろんな変化があるじゃないですか。この10年くらいで社会的な常識のラインもかなり動いているし、「1回も間違えずに生きていく」みたいな幻想は捨てたほうがいいと思うんです。どういう場面でそう思うかは人によって違うだろうけど、「あんなことをしてしまって申し訳なかった」みたいなことって普通に起きるので。

――そうですね。一方で今の社会は失敗が許されない雰囲気もあって。

のびのび失敗できる場所のほうが、成長のチャンスはあるんですけどね。カイジ(漫画「賭博黙示録カイジ」)の“鉄骨渡り”じゃないけど(笑)、「踏み外すと大けがする」みたいな状況で「面白い歩き方をしてみよう」なんて思わないじゃないですか。音楽の現場も失敗することはすごく大事なんですけど、予算が少なくなると、失敗できなくなるんですよ。「今日中に6曲録らないと予算内に収まらない」となると、「失敗しないように」という意識になりがちだし、いいテイクが出るまで粘ることもできなくなる。失敗できる社会のほうが可能性があるし、豊かなんじゃないかなって気がしますけどね。

――「朝からロック」は社会や政治などの時事ニュースを取り上げることも多いですが、一方で音楽のことにもかなり触れていて。アジカンに対する思いを綴った回もありますね。

リポストされやすいのは時事ネタだったりするんですけど(笑)、バンドは小さい社会だし、比喩として捉えるとけっこう面白いんですよね。芸術は独裁的にやらないとよくならない部分もあって。バンドのことで言えば、メンバー全員のコンセンサスを得ようとしたら、ぬるい表現になってしまうこともある。とはいえ、民主的な手続きも踏まないと、バンド自体が立ちゆかなくなるっていう。社会とバンドの共通点や違うところを考えるのは楽しいし、勉強になりますね。

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「国って何だろう」