俺が夜な夜な飲み歩いているのも、「青春」ってことにして見逃してくれていたんだ。この言葉は、俺の心に金字塔のように残っているよ。ただ、条件がひとつあって、それが「娘が小学校に行く前に帰ってくること」。朝に近所の通勤、通学の人に飲んで朝帰りしている夫を見られるのが恥ずかしいからって(笑)。

 普段の女房はこんな優しいことばかりじゃなく、ことあるごとに俺を諭すようなことを言うんだけど、俺は「うるせえ! 関係ないだろう!」という態度をとるのが常。それが何年も後になってから「俺は最近、こう思うんだけど~」と話と、女房はすかさず「そんなこと、何年も前か言ってるやろ! だから言うたやん!」と言われることがしょっちょうだった。女房にもあきれられて「あんたはいつも気づくのが“周回遅れ”だね」と言われる始末だ。

 もうひとつ、女房に怒られて印象的だったのは、お世話になっているスポンサーとの食事で、相手を差し置いて俺が会計を払ったときのこと。俺が得意げに「自分で払ったよ」と女房に言うと「あんたはアホやな。相手の顔を潰して。なんでそんなことしたんだ!」って怒られたことがあった。

 俺もそのとき、ハッと気が付いたんだ。俺もいい恰好しいだからね。ただ、ひとつ言っておきたいのは、だからといって、いつでも、誰にでもゴチになるわけではないということ。

 件のスポンサーは本当にお世話になっている人だからいいが、中には大した金も使わないで「天龍をはべらかして飲んでいる」って言うやつもいるから、そんな相手は突っぱねなきゃいけない。

 そもそも“お車代”だって相撲のタニマチが10万円くれるのに対して、プロレスラーになると1万円だからね。相撲時代の金銭感覚が残っていた当時の俺としては、そのくらいの金額でへいこらしてらんない。そのさじ加減、見極めが難しいんだ。俺はいつもテンパって生きてきたけど、テンパって生きるのも疲れるよ……。

 そんな“周回遅れ”の俺が、今の若い相撲取りやプロレスラーに伝えたいことは、やっぱり佐賀ノ花親方が言った「お前らがいい恰好できるのは、若いやつらがスター扱いして立ててくれるお陰だ」ということ。

 俺もこの年になって、ようやくそういうことを若い連中に言えるようになった。そして、ジャンボが言っていたように「金は貯めておけよ」ということだ。73歳になって振り返って、ようやくジャンボが正しかったことがわかったよ。

 あれだけ金使って、酒飲ませて、どんちゃん騒ぎして、友だちがいっぱいいると思ったけど、今の俺を誰も見舞いにこないんだぞ! あの金はなんだったんだ! 今から“天龍会”でも作って、いろいろ集めて仲間を作るか。仲間を大事にするトラック運転手のあんちゃんたちが集まってくれるかな?(笑)。

(構成・高橋ダイスケ)

[AERA最新号はこちら]