まもなく暮れる2023年を、AERA dot.で読まれた記事で振り返ります。3月は、岸田総理がウクライナ・キーウを電撃訪問し、WBCで日本代表「侍ジャパン」が優勝しました。また、ノーベル文学賞を受賞した作家の大江健三郎さんが亡くなりました。AERA dot.では、この月に公開された映画「Winny」に出演した俳優の吉岡秀隆さんの記事「俳優・吉岡秀隆のリアル過ぎる演技に警察幹部が『困った映画だ』 警察裏金問題を告発した元巡査部長とは」が読まれました(肩書や年齢等は配信時のまま)。
【写真】現役の警察官が警察の裏金問題を告発する記者会見はこちら
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「組織のためなら何してもいいんか?」制服を着た巡査部長役の吉岡秀隆さんが、同じ警察官にそう問いかける。3月10日に封切られた映画「Winny」の一場面。吉岡さんの役は、愛媛県警の巡査部長時代の2005年に、県警の裏金問題を実名で告発した仙波敏郎さん(75)だ。巨大な組織を敵に回してでも仙波さんが貫こうとしたこととは何だったのか。
「18年前に警察の裏金問題を告発したことを、大手の配給会社の映画の中で取り上げてもらい、本当に感無量です」(仙波さん)
映画の主役は、東出昌大さんが演じる天才プログラマーの金子勇さん(2013年に42歳で死去)だ。2002年、当時、東京大学大学院助手だった金子さんは、インターネットで映画や音楽などの情報を直接やりとりできるファイル交換ソフト「Winny」を開発し、その試用版をネットの掲示板「2ちゃんねる」に公開した。
すると、大量の映画や音楽などが違法にアップロードされ、事件化されることも多かった。2004年、金子さんは著作権法違反の幇助(ほうじょ)の容疑で京都府警に逮捕されてしまう。その後、金子さんは弁護団と裁判を戦い、2011年に無罪を勝ち取る。映画はその7年間の壮絶なストーリーを描いている。
そのなかで、仙波さんの警察裏金問題の告発の話が出てくる。接点はWinnyだった。Winnyは情報漏洩系ウイルスに感染しやすく、個人や企業、官公庁の情報などが次々とインターネット上に流出した。警察でも捜査情報が漏洩するトラブルが相次いだ。
仙波さんがこう説明する。
「裏金づくりの手口は、白紙の領収書に、捜査協力をしてもらったとして一般市民の架空の名前や金額、日付などを書かせます。私はニセ領収書を書きませんでしたから、当然のことながら実物を持っていなかった。そこで『仙波の(告発の)話は本当なのか?』となった。しかしその後、愛媛県警の刑事がWinnyに接続した結果、パソコンのデータが流出したんです。その中にニセ領収書が含まれていたので愛媛県警が言い訳できなくなった」