タイトルに目が釘付けになった。樺沢紫苑『精神科医が教える 読んだら忘れない読書術』。自慢じゃないが、私は本の内容を忘れる名人だ。書評した本の内容さえ、すぐ忘れる。もし「読んだら忘れない読書術」があるなら、教えて教えて!
 1日1冊、月に30冊は読むという読書家の著者はいう。〈ネット情報というのは、デパ地下の試食のようなものです〉〈1年たって古くなるのが「情報」、10年たっても古くならないのが「知識」です〉〈私が考える「本を読んだ」の定義は、「内容を説明できること」、そして「内容について議論できること」です〉。ふむふむ、なるほど。納得したので、線を引いておこう。
〈読書量と年収は、比例する〉〈年収の高い人は読書量も多いという結果が出ています〉という話は、逆は真ならず(読書量が多い人の年収が高いとは限らない)だと思うので脇に「?」と書き込む。
 肝心の「読んだら忘れない読書術」はこれだ。〈「アウトプット」と「スキマ時間」。この2つを意識するだけで、あなたも「記憶に残る読書」ができるようになります〉。
「アウトプット読書術」とは、マーカーでラインを引く、本の内容を人に伝える、感想をSNSでシェアする、書評を書くなど。
 そういうことは全部やってるんですけどね、と思ったら次の「スキマ時間記憶強化読書術」にこんな教えが。〈まとめて読書するよりも、スキマ時間に読書したほうが「記憶」において有利な点が多いのです〉。60分連続で読むより15分単位の細切れ読書のほうが効率的なのだと。
 ガーン、私の読書は一気読みだよ。なので〈高い集中力が維持できる限界が15分〉のところに線を引いたが、一番ツボにハマったのはここ。〈厳しいようですが、そんな「読んでも忘れてしまう読書」で年に100冊読んだとしても、ザルで水をすくうようなもので、時間の無駄です〉。す、すみません。でも細切れ読書だと仕事にならないんですよ。

週刊朝日 2015年7月17日号

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