フードライターの菊池いづみがパリで出会った厚かましい女──それが中島ハルコ。「喋らなければ美人」の52歳バツ2、IT関係の女社長で、金遣いも人使いも荒い。けれど不思議なことに、ハルコの周りには人が絶えない。
本作は、毎回ハルコが持ちかけられた相談を解決していく1話完結もの。「不倫がやめられない」「息子が大学を辞めてミュージシャンになろうとしている」「親が結婚に反対している」……ハルコは老若男女の悩みを、時には適当に、時には激怒しながら遠慮なくぶった切る。おばさんヒロインが活躍する小説であるのと同時に、林真理子の人生相談エッセイ的な側面もある作品だ。
けっして友達にはなりたくないが、遠くで見ていると愛しく思えるハルコ。モデルとなっているのは、エッセイにもよく登場している林真理子の友人の女性。林の辛口な人生観が加わって、毒々しく気持ちのいいヒロインが生まれた。図々しさだけではなく、弱さを見せるシーンもあり、「かわいいところもあるじゃないか」と思わされてしまうのがにくい。
※週刊朝日 2015年7月17日号