歪みは弱いところに
通常学級に先生が引き抜かれるだけでなく、未熟な教師を「教育して」とばかりに押し付けられる。現場の先生の負担は計り知れないうえ、特別な支援を必要としている子どもに支援が行き届かない恐れもある。
「個人に合わせて教える特別支援教育は、とても創造的な分野です。自分でつくった授業が子どもにはまると、とてもおもしろい。そのような豊かな学びが、先生の不足で失われつつあるのです」(同)
今回記事を書くにあたって、東京都教育委員会に特別支援教育にたずさわる教員の不足に関する統計資料を求めたが、保持していないということだった。スキルのある教員を、適正な数配置することは、各教育委員会の責任だ。そのためには、まず教員不足の現状を数字で把握することが不可欠のはずだ。
東京都教職員組合が9月から11月にかけて行った「東京都教職員欠員・未配置調査」は228人が回答(そのうち所属校重複は3校)。都内の小中学校など約1900校のうち、約10分の1にあたる学校の状況が反映された形だ。一部の学校への調査であるにもかかわらず、「未配置・未充足・欠員」の合計は188人にのぼった。そのうち、特別支援教育に関わる不足は44人と約4分の1を占めた。
社会の歪(ゆが)みは、いつも弱いところに押し寄せる。先生不足のしわ寄せは、特別支援教育にたずさわる先生と、そこで学ぶ子どもたちに容赦なく襲いかかっている。(ライター・黒坂真由子)
※AERA 2023年12月18日号より抜粋