阪神から1位指名を受け、胴上げされる白鴎大時代の大山

 1位指名で名前が読み上げられた時に会場からため息が出たという現実は、なかなか受け入れられるものではない。当時21歳だった大山が負った心の傷は想像を絶するものがある。だが、悔しさをバネにはい上がった。阪神はメディアの注目度が高い。大きな重圧につぶされて短命に終わる選手が少なくないが、コツコツと努力を積み重ねてチームに不可欠な中心選手に成長した。佐藤輝明、森下翔太が伸び伸びプレーできているのも大山の存在が大きい。普段は喜怒哀楽を表に出さないが、今季に18年ぶりのリーグ優勝を決めた際は大粒の涙を流していた。重い十字架を背負っていたことを象徴させる光景だった。

 阪神が来年以降に黄金時代を構築するうえで、大山の存在は不可欠だ。近本光司、木浪聖也ら気心知れた同学年の選手たちだけでなく、先輩や後輩からの人望が厚い。茨城県出身だが、関西で7年間過ごしてすっかり溶け込んでいる。FA権を行使するか来オフの決断が注目されるが、阪神に複数年契約で残留が基本線とみられる。

 一方で、一人の野球人として「他球団の評価を聞きたい」という思いを持っても不思議ではない。チームに強い愛着を持ちながら、高い評価で獲得を熱望する他球団に移籍するケースは数多くある。

「大山は一、三塁を守れる強打者。需要が高いことは間違いない。1年後の話なのでチーム編成が予測できない部分がありますが、ソフトバンク楽天日本ハム補強ポイントに当てはまります。正一塁手のオスナが来年に3年契約最終年を迎えるヤクルト、一塁のレギュラーが固まっていないDeNAも動くかもしれない。気になるのは巨人ですね。岡本を一塁、坂本勇人を三塁でレギュラー起用の方針が固まっていますが、岡本はメジャー球団の評価が高い。ポスティングシステムでの移籍は球団サイドが基本的に認めない方針ですが、もしV奪回、日本一で岡本のメジャー移籍が実現すれば、後釜として大山獲得が選択肢になる。4年連続V逸となった場合も、外野を守れる大山の獲得に動く状況が考えられます」(スポーツ紙デスク)

 阪神から因縁のライバルである巨人にFA移籍したケース、逆のケースも過去にはない。現段階では「禁断の移籍」がピンとこないが、大山は来オフにどのような決断を下すか。早くも気になるところだ。

(今川秀悟)

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