塙宣之さん。2023年の6月に漫才協会の会長に就任した(撮影/高野楓菜)

 もちろん、師匠たちが話をしてくれることはありがたいことですし、愛情だと思って聞いています。ただ、話が長いので「はいはい」と素直に聞いていたら、ずっと同じことを繰り返ししゃべり続けます。そんなときは、逆にこっちが師匠以上の熱意で語るのがコツです。すると急に冷めちゃうみたいで話が終わるんです。

 師匠たちを見ていて思うのは、僕は65歳くらいで引退して、あとは奥さんと旅行でもしてのんびりしようかなーってこと。師匠たちは、だいたい70歳くらいでコンビ仲が悪くなったり相方が病気になったりして引退することが多いんです。「舞台の上で死ねたら本望」なんていう考え方もありますが、高齢になれば、絶対に今よりもクオリティーは落ちるわけですし、やめどきについて考えることはあります。

 ありがたいことではあるんですが、今はテレビやラジオ、そして寄席と隙間なく仕事をさせていただいています。特に寄席は、お正月はもちろん、年末年始も舞台があるので、本当に休みがない状態です。もちろん、本気で65歳で引退って決めているわけではありません。まだ45歳ですし、20年先に考え方がどう変わるのかもわからないので、あくまでも一つの選択肢として引退というのもありかなとは思っていますね。

 漫才協会とは別に取り組んでいるのが、「劇団スティック」という棒読みを特技とする劇団の座長です。「警視庁・捜査一課長」(テレビ朝日系)に、僕が奥野親道役で出演したとき、視聴者から「セリフが棒読みだ」って揶揄されたのがきっかけで、じゃあ棒読みの劇団を作ってやろうと思ったんです(笑い)。

 23年3月に旗揚げ公演を行いました。団員は15 人くらいですが、ほとんどが素人。稽古しながら皆で一つの作品を作り上げていく過程っていうのが楽しくて、けっこう本気でハマっていて、劇団の活躍の場を広げていこうと思っています。

(構成・文/山下 隆)

はなわ・のぶゆき/1978(昭和53)年、千葉県生まれ。中学時代から芸人を志し、大学卒業後、後輩の土屋伸之と漫才コンビ「ナイツ」を結成、内海桂子の弟子として活動する。NHK新人演芸大賞 演芸部門大賞、浅草芸能大賞 大賞など数多くの賞を受賞。「M-1グランプリ」(朝日放送テレビ・テレビ朝日系)審査員をはじめテレビ、ラジオ、舞台で活躍中。2023年には漫才協会会長に就任した。新著の、ちょっと変わったお義父さんの日常を塙さんの軽妙な文章で描いた『静夫さんと僕』(徳間書店)も話題になっている。

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