「“諦め”の境地に達したことでうまくいきはじめました」と語る塙さん(撮影/高野楓菜)

“諦め”の境地に達したことでうまくいきはじめました

 いざ一緒に住みはじめてみると、最初の2年間くらいはイライラすることもありました。先のエピソードに加え、静夫さんは、玄関に物を置きっぱなしにするし、水まきでしょっちゅう玄関を水浸しにしてしまいます。洗車したての僕の愛車にまで水をかけられて、「水あかになっちゃうじゃないですか!」と、何度も注意しましたが、「えぃえぃ」ってわけのわからない返事をするだけ。

 本人もまずいと思ったのか、ある日白い布で車を拭いてくれたんですけど、よく見るとその白い布は、穿き古した静夫さんのブリーフで……。なんかもう、膝から崩れ落ちるような思いでした。静夫さんに悪意がないぶん、よけいに困りました。

 それ以来、諦めることにしたんです。車が濡れたら自分で拭く。静夫さんの奇行にもいちいち目くじらを立てない。案外、この〝諦める〟ことで、ほどよい距離感が生まれた気がします。

 たぶん義母のやす子さんや娘たちも、静夫さんに対してはそんな境地に達していたんだろうと思います。そうじゃなきゃ、絶対に静夫さんとは一緒に暮らせないでしょう? うまく距離を取りながら生活していると、静夫さんの身勝手な振る舞いにも、いちいちツッコまなくてすみますからね。

 それと、やす子さんが人格者で、家の中で非常にうまくバランスを保ってくれています。いつも穏やかで、家族を見守る仏様みたいな人です。自分勝手に振る舞い、奇行に走りがちな静夫さんが、自由に生きていられるのもやす子さんのおかげだと思います。

65歳で引退してのんびり旅行するのもいいかも?

 2023年の6月に漫才協会の会長に就任しました。ふだんから年配の師匠たちとのコミュニケーションに慣れていると思われがちですが、ぜんぜんそんなことはありません。僕なんかよりも兄貴(お笑いタレントのはなわさん)のほうがずっと陽キャラですし、高齢者からも好かれるタイプだと思います。

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