
誰しも認める漫才の実力でテレビや舞台に大忙しのお笑いコンビ、ナイツの塙宣之さん。超個性的なお義父さんとの生活をまとめたエッセー『静夫さんと僕』(徳間書店)が話題です。今回は抱腹絶倒のお義父さんのエピソードや漫才協会の会長となった塙さんご自身について伺いました。発売中の「朝日脳活マガジン ハレやか 2023年12月号」(朝日新聞出版)より抜粋して紹介します。
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・道端から雑草を摘んできて、家のいたるところに飾る。
・大好物はサッポロ一番のしょうゆ味で、一度に2袋食べる。
・3人の娘の名前は、すべて昔憧れていた女性の名前。
・注射が大嫌いで、病院と聞くと部屋に籠城する……。
これらは、静夫さんのエピソードのほんの一部です。静夫さんは、僕の奥さんのお父さん、僕にとって義父にあたります。鹿児島県の奄美出身で、現在78歳。10年ほど前から同居していますが、エピソードからもおわかりいただけるように、若いころからいまだに天真爛漫。自分のやりたい・言いたいことは曲げない頑固さがあって、誰が言っても改めることはありません。
若干、奇行は目立ちますが(笑い)、とても家族思いな人で、僕のことも「宣之くん」は堅苦しいからと、「のぶたん」って呼んでくれて、なんとも不思議な魅力のある人です。
同居のきっかけは、新居を建てるとき。僕から「一緒に住みませんか」と提案したんです。当時、奥さんのご両親は団地の4階に住んでいて、エレベーターもなく階段の上り下りが大変。すでに高齢でしたし、静夫さんは足を悪くしていましたので、同居の話をきっと喜んでくれると思ったんです。義母のやす子さんは、とても喜んでくれましたが、静夫さんは「絶対にやだ!」と、まさかの拒絶。同居によって自分のルールやペースが崩れるのが嫌だったんでしょう。説得するのにかなり苦労しました。
周囲からは、義両親との同居なんて大変だよとは言われましたが、1階と2階で生活圏が分かれていますし、さほど深く考えませんでした。むしろ、僕は仕事で家を空けることが多いので、同居することで奥さんの子育てや家事への負担が少しでも軽くなればと思ったんです。また、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に暮らすことは、子どもにとってもいいんじゃないかとも思いました。