「終活」とは、人生の最期の時を意識しながら、これからの人生を自分らしく生きるための準備をし、亡くなった後に備えることでもある。忘れてはならないのは、終活を楽しむという視点だ。AERA 2023年12月18日号より。
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楽しむことも、終活。それを実践している人がいる。順天堂大学医学部教授の小林弘幸さん(63)は、「終活は、終わりではなく始まりだ」と話す。
終活を始めたきっかけは3年前、もうすぐ60歳になる自分にも「退職」の日が来ると初めて意識したとき。小林さんは退職をゴールと考えるのではなく、新しいスタートにしようと、自分なりの終活を開始したのだ。
「たとえば、日常の中でワクワクすることを探し出すんです。職場から最寄り駅までいつもは歩いて5分30秒かかっていたのを、きょうは5分を切るぞ、とか。そんなことでもいい」
一方で、小林さんは「自分が亡くなった後に備えること」にも怠りない。資産関連の情報については1冊のノートにまとめ、内容を家族に伝えてある。
「終活は自律神経にとっても、いいことなんです。予想外のことが起きると自律神経は乱れてしまいますから。『すべてを想定内にしておくこと』が大事です」
ただ、小林さんは60歳からの終活は「少し遅すぎたかな」と感じているという。
「50歳くらいから始めれば、理想の形に無理なく行きつけるのではと感じます。たとえば、この先もワクワクして過ごすためには健康が大事。自分の体の衰えに気づき始める50代頃から、健康へのポジティブな目標を掲げるのもいいと思います」
毎年、きちんと検診を受ける。何か違和感のある症状が2週間続いたら必ず病院に行くとルールを決める。朝食は必ず食べる。運動のためエスカレーターは乗らず階段で、電車では座らない。そんなことを意識することも終活だと小林さんは話す。
「『人生を輝かせるための一つのステップ』。そんなイメージで終活に取り組んでほしいと思いますね」
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2023年12月18日号より抜粋