奥山佳恵さん(撮影/写真映像部・佐藤創紀)

母に否定されたら立ち直れない

 奥山さんはどのように受け入れていったのだろうか。まず始めたのが、周囲の人に伝えることだったという。

「とにかくショックが大きくて、自分自身も状況を理解することができていなかったんです。だから、まずは近所の人に美良生はダウン症なんだって伝えることで自分に言い聞かせようと思いました。でも、まだ心の傷が癒えていなかったので、自分の言葉に傷つき、打ちのめされました。そうしているうちに、完全には治っていないけれど薄いかさぶたができた状態になったんです。でも、そうすると今度は気持ちに余裕が出てきた分、相手の表情や言葉に意識がいくようになって、相手の反応で傷つくようになりました」

 傷つくたびに、美良生くんを抱き寄せて、折れそうになる心をなんとかつなぎとめていたという。

「この子を抱っこしていると、心からかわいいと思えるんですね。周囲の人に伝えるなかで傷ついたら、この子を抱きしめて、エネルギーをチャージして、また世の中に向かっていきました。こうしたことを続けていくうちに、どんな言葉が返ってきてもだんだん平気になってきたんです」

 しかし、実母には最後の最後まで言えずにいたという。伝えることができたのは美良生くんが生まれて、2カ月近くがたってからだった。

「いつもニコニコしている大好きな母に、もし私や美良生のことを否定されたら、立ち直ることができないという恐怖があったんです」

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「弟はかわいい時期が長く続くからいいだろう!」