そして、Xさんが強く印象に残ったのは、次の話だった。

「弁護士に話したことが劇団側に伝わりそうで、中立性がなく(先輩劇団員や劇団の体質について)批判的なことが言える雰囲気ではなかった。Aさんには心の中で謝った」

 調査が安心して話せる状況にない以上、Xさんは、報告書にも実態が反映されているとは思えないとみている。

 また、その後の劇団側の対応についての話も、首をかしげざるをえないものだったという。

「11月14日の記者会見前に、Aさんが所属していた宙組のメンバーに召集がかかった。劇団の幹部と向かい合ったが、調査報告書ではパワハラなどと騒がれていることは認められていない、と言うばかり。『おかしいのでは』と首をかしげる劇団員もかなりいたが、中止している公演を早く再開できないかと。問題を理解できていない人もいて、とてもしらけた集まりだった」

劇団員死亡について会見する宝塚歌劇団の木場健之理事長(当時/左)、村上浩爾専務理事(現、理事長)=2023年11月14日、兵庫県宝塚市

 Xさんは、

「調査報告書が出てからも、劇団の中では『Aさんがダメだからこんなことになる』『情報を週刊誌にリークするからだ』などとAさんに責任を押し付けんばかりの声が聞かれます。ひどい話ですが、劇団からの圧力でもあるのかと思うくらいです」

 と話した。

 会見から2日後の11月16日のこと。

「雪組」の劇団員と、宝塚歌劇団の新しい理事長に就任する村上浩爾(こうじ)氏ら幹部との面談があったという。

経営面の心配ばかり

 劇団側は、いじめやパワハラの有無については、

「調査報告書の通り、いじめやパワハラは確認されていません」

「いじめやパワハラのような行為があったのかもしれないが、弁護士が調べているので法的にはそれにあたらないということです」

 と繰り返していた。

 さらには、

「今回は宙組だったが、どこの組でも似たような話はある。ずっと昔からあること」

「マスコミで大騒ぎされている。認めてしまうと劇団全体が大変なことになる」

「コロナもあったし、公演をやっていかないと経営の問題もある」

「中止している公演の穴埋め分をやってはどうか」

 など、劇団の経営面の心配ばかりをする当事者意識が欠如した発言まで出ていたという。

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劇団員の親同士が弁護士と交渉を?