宝塚歌劇団の劇団員のAさんが今年9月に死亡し、公演を中止していた宝塚大劇場(兵庫県)が、12月1日から再開した。ただ、公表された「調査報告書」の調査方法や内容についての信頼性に疑義が示され、「いじめ、パワハラは確認できなかった」と主張する劇団側に対する遺族側の不信感は根強い。現役の劇団員が口を開き、「弁護士をはじめ、劇団は悪くないという結論ありきのような……」などと語った。
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「労働基準監督署という役所が公平な目で、権限をもって調査に入ることはうれしい」
そう話すのは、現役の劇団員Xさん。
労働基準監督署が11月22日に歌劇団への立ち入り調査を実施したことについて、少しホッとした様子で話した。これまでも指摘されてきた、俳優らの過酷な労働環境の実態解明を目指すものだ。
ただ、11月14日に公表された報告書については、
「繰り返し読み返しましたが、『これじゃ全然、調査してないじゃん』って感じでした。亡くなったAさんの思いなんてまったく届いていない。Aさんに何があったのか、しっかりと真相を解明して、二度と同じようなことが起こらないようにしなければならないはずです。今回の調査方法では、ほとんどの劇団員は怖くて本当のことを話せないと思います」
話をじっくり聞こうという姿勢は感じられない
Xさんが注目したのは、<調査報告書(概要版)>の冒頭にある<ヒアリングの実施>の部分だ。
劇団員のヒアリングは1人あたり最短35分、最長6時間9分(複数回の合計)、多くの人は1時間から2時間程度とある。
Xさんは、ヒアリングを受けた複数の親しい劇団員からそのときの様子を聞いた。
団員は、
「弁護士ら2、3人から質問が出るけど、劇団の基礎的なことを理解していなくて話がかみ合わなかった」
「最初から、いじめやパワハラはなかったと誘導しているような話の流れだった」
「話を聞かれる劇団員の順番も時間もおおよそ決まっていて、じっくり話を聞こうとか、問題の解決にあたろうとか、真相解明しようといった姿勢は感じられなかった」
と不満を述べていたという。