「無料塾」とは、読んで字のごとく、子どもたちから授業料を一切取らず、ボランティア講師が無料で勉強を教える塾だ。八王子にある無料塾「八王子つばめ塾」を運営する小宮位之氏は、これまで300人以上の貧困家庭の子どもたちの学習を支援してきた。子どもに求めるのは勉強へのやる気のみ――それだけが「月謝」の代わりとなる。無料だからといって質が低いわけではない。むしろ、有料塾以上の価値を得られる可能性もあるが、やる気のない生徒には厳しさもある。小宮氏が追求する「無料塾」の理想形とは。『「無料塾」という生き方』(ソシム)より一部を抜粋、編集して掲載する。
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入塾できる3つの条件
私が運営する八王子つばめ塾の講師は、全員がボランティアで構成されています。交通費は自己負担で、アルバイト代も受け取らないボランティアの講師が、子どもたちを無料で導いてくれています。教室は、八王子市の公民館や病院、市内の寺院が地元市民のために活動場所として提供するビルの1室などを使わせていただいています。
講師だけでなく運営や事務も、すべてボランティアスタッフのサポートと寄付金によってまかなわれています。2012年のスタート以来、資金や物品を含めるとのべ200人以上の方から寄付をいただきましたが、初めての寄付は八王子つばめ塾の卒業生からでした。この2千円は今でも私の心の中に、温かいものをもたらしてくれています。
八王子つばめ塾に生徒が入塾するには、次に掲げる3つの条件があります。
・ご家庭が経済的に困難であること
・ほかの有料塾、家庭教師に習っていないこと
・本人に勉強をする気があること
この3つの条件をすべて満たさないと、入塾はできません。