寺院から提供されている教室の様子

「無料」が秘める可能性

「無料で運営することの難しさ」についてよく聞かれますが、強いて言えば、ボランティア講師や会場の数が限られているために授業のコマ数を増やせないことくらいで、無料だから難しいとは感じていません。むしろ無料でやっているからこそ、有料塾にはない可能性が秘められているのです。

 市場経済の理屈で考えれば、無料塾で提供している0円の教育には、価値がないように見えるかもしれません。確かに世間では1万円を出せば1万円相当の、5千円を出せば5千円相当のサービスやものが手に入ります。支払った費用に相応する価値があると思ってお金を出すのが当たり前です。

 しかし、八王子つばめ塾で教えてくれている講師には、普通の有料塾で教えを受けたら、いくら必要になるか分からないほどの経歴を持つ方もいます。例えば、大手の自動車メーカーや総合IT企業で管理職向けのTOEIC講座を担当するプロの英語講師の方もいます。必ずその講師に当たるかは、くじ引きみたいなもので分かりませんが、有料塾で教えてくれる講師よりも、ともするとポテンシャルの高い先生に教えてもらえる可能性があるということです。少なくとも、無料であるがゆえに、有料の塾以上の価値を得られる可能性があるのです。

 つまりハイリスク・ローリターンの可能性はゼロで、ノーリスク・ハイリターンの可能性さえあるのです。

※【中編】<貧困家庭を救う「無料塾」をつくった37歳会社員がまさかの“貧困”に…立ち上げ1年の壮絶なバイト生活>に続く(12月4日公開)

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