暴言や怒りへの対処法は?

 認知症が原因で感情がうまくコントロールできなくなることがあります。

おだやかだった人が、人が変わったように暴言や怒りを爆発することがあります。

ご家族からすると「急に怒りだした」「暴力をふるいだした」「人が変わってしまった」という印象を受けるでしょう。しかし本人の中では、ずっとためこんでいたマグマが抑えきれずに噴火した状態なのです。

もちろん、ご家族が悪いと言っているのではありません。

きっかけは周囲の人の言動にあったとしても、怒りの真の理由は自分のプライドだったり、誤解だったりする場合が多いものです。

本人の言い分が100%間違っていたとしても、認知症グレーゾーンの人は、感情のコントロールがうまくできなくなっていますから、いったん振り上げたこぶしを自ら下ろせないことがあります。したがって、本人が怒り始めたら、ご家族が譲歩するのが現実的です。

本人には申し訳ないと思いつつも、「自分のほうが優位な立場にいる」と思うだけで心にゆとりができます。

2歳の子どもがイヤイヤ期を迎えて反抗的になっても、「子どもだから仕方ない」と思うのと同じように、「この人は病気なのだから、私が折れてあげよう」と考えると、気持ちがだいぶラクになります。

2回我慢、1回は自分の不満を言おう

 そうはいっても、いつもいつも作話にあいづちをうち、理由もなく怒りをぶつけられても受容する、といった生活をしていると、ご家族のほうが心身のバランスを崩して倒れかねません。

ですから私は、「3回に1回は、ご家族のほうも上手にガス抜きしましょう」と、お伝えしています。

理不尽だなと思う言動が3回あったとします。

でも2回は我慢する。

そして3回目は、自分の中にたまっている不満を軽くぶちまけます。

「それはおかしい」「怒鳴るのはダメ」など相手を否定するのではなく、「私はこう感じている」「こう思っている」という形をとるのがポイントです。

「私だって精いっぱいがんばっているのよ」「いつも文句ばかり言われていると苦しい」と、思いの丈を伝えましょう。根底で相手をリスペクトする気持ちを忘れなければ大丈夫です。

イライラして怒ってしまったあとは、大体自己嫌悪に陥るものです。

「ここで怒ったら、私はダブルにへこむ」と思い直し、2回は深呼吸をして我慢する。

でも、3回目は自分のためにガス抜きをする。そうした自分を守るための緩急をつけた対応が、認知症グレーゾーンの人に接するご家族にとっては大切です。

認知症カフェで同じ思いを語り合おう

 最近は、『認知症カフェ』『オレンジカフェ』『ふれあいカフェ』といったさまざまな呼び方で、ご家族同士が集う場が地域ごとに設けられています。そうした場へ行くと、自分と同じ悩みを共有できる人たちと出会うことができます。

認知症の介護では、ふとした瞬間に分かり合えたり、衰えていく脳の中にある豊かな感情に気づいたりして、光が差すように感じる瞬間もあります。

そうした体験を話し合うことで、勇気づけられ、温かい気持ちを取り戻せることもあります。

認知症カフェのような場は、認知症グレーゾーンのご家族も参加できます。

「誰かにわかってほしい」と思っている人は、自治体に問い合わせたり、インターネットで検索したりして、そうした家族の会へつながることを強くおすすめします。

暮らしとモノ班 for promotion
【Amazonブラックフライデー】先行セール開催中(28日23:59まで)。目玉商品50選、お得なキャンペーンも!