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 何度も同じ失敗をしたり、同じことを言ったり、認知症の家族にイライラする時はどうすればいいのだろうか? 「認知症の人に『なんで』『どうして』といった正論を言っても通用しません。否定するよりも、一歩引いて本人が納得するようにうまく導くほうが得策」と話すのは、認知症専門医・朝田隆(あさだ たかし)さん。朝田さんの著書『認知症グーゾーンからUターンした人がやっていること』(アスコム刊)から、認知症の家族に対する神対応を紹介します。

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失敗や間違いは「叱るより、ほめたおす」 

 認知症グレーゾーンになると、失敗したり、間違えたりすることが頻繁に起こります。

それは本人も自覚していて、「なぜこんな簡単なことができないんだ」と、内心もどかしく思っています。

そうしたときに『不本意な失敗』を指摘されると、プライドが傷ついて怒りを抑えられなくなり、爆発してしまいます。

「なんで」「どうして」といった正論を言っても通用しません。

否定したり、正論をとなえたりするよりも、一歩引いて本人が納得するようにうまく導くほうが得策です。

このときのキーワードは「叱るより、ほめたおす」です。

【ほめたおし作戦・Uさんの例】

 父親がレジの若い店員の対応が気に入らなくて暴言を吐き、帰宅したあとも怒りがおさまらず、「とにかく態度がなってない」と家族に訴えたことがあったそうです。

 Uさんからすると、「それは親父がおかしい」と思ったものの、頭から否定するのではなく、「そうだね。年配の人に対してそんな態度をとるのはおかしいよね。その若い人も勉強になったと思うよ。すごいじゃん」と、まずはほめたといいます。

すると、父親はちょっと戸惑いながらも、気持ちを理解してもらったことで満足したのか、「そうだよな。おまえもそう思うよな」と、怒りがおさまったそうです。

 そのタイミングでUさんは「でもさ、若い人にあんまり強い言葉で言うと怖がってしまうから、もうちょっとやさしい言葉で言ったほうがわかってくれるんじゃないかな」と伝えたところ、父親は何も答えなかったものの、納得した顔でおとなしく自分の部屋へ戻っていったといいます。

 実際にUさんの父親も、ほめたおし作戦を実行してからは、不安定だった状態が安定するようになったそうです。

少なくとも、ほめたおしていれば、怒りの矛先があなたに向くことはありません。

家の中でのもめごとは減り、おだやかな日常を送ることができます。

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「作り話(作話)」も、否定せずに耳を傾ける