「これ何かわかる?」と試してはいけない理由
「これ誰かわかる?」「今日の日付言える?」「昨日の夕食何だったっけ?」
ご家族が日常生活のなかでやりがちなのが、「わかる?」という確認作業です。
本人がどこまで理解しているのかを知りたくて、つい聞いてしまう気持ちはわかります。何気なく聞いている場合も多いでしょう。
しかし、これは絶対にNGです。
いちいち試すような質問をされると、本人はバカにされているような気になり、傷つきます。
【これわかる?・Wさんの例】
Wさん(72歳・男性)は、奥さんと二人暮らしで、認知機能の衰えを感じているものの、普段はおだやかに暮らしていました。
ところが、近くに住んでいる娘さんのご家族が週に一度くらいの頻度で遊びに来
て、そのたびに「お父さん、私のことわかる?」「孫の名前は言える?」と質問攻めにします。
娘さんは、そうすることでお父さんの脳を刺激しようとしたのですが、Wさんにとっては大変なストレスでした。
しかも最近は、4歳の女の子のお孫さんまでが母親を真似て「私は誰かわかる?」とか「自分の名前言える?」といったことを聞いてくるようになりました。
そのうち、娘さんの家族が来ても自分の部屋に閉じこもって出てこなくなりました。
こうしたケースは意外に多く、ご家族はよかれと思って対応していても、本人にとってはストレスになりかねません。その結果、Wさんのように人と接することを避けるようになると、認知症グレーゾーンを進行させてしまう重大な要因となります。
認知症グレーゾーンの段階はもちろん、認知症になってからも、かなり進行するまでは人格は保たれます。
ごく身近な親族であっても、本人に対するリスペクトを忘れずに、「大切なお父さん」「大好きなお母さん」「愛する夫(妻)」という思いをもって接することが大切です。