1902年7月5日、11歳のマリアが家でひとり、2歳の妹の子守りをしていたところにアレッサンドロが現れます。淫らな欲望で自分を見失ったアレッサンドロはマリアを力ずくで寝室まで引きずると鍵を閉め、暴行に及ぼうとします。マリアが必死に抵抗したことでアレッサンドロは怒りを暴走させ、近くにあった短刀でマリアを14か所も刺しました。気がつくとマリアは血まみれで動かず、ふと我に返ったアレッサンドロは怖くなって逃げ出します。その直後に帰宅した母親は、あまりの光景に半狂乱になって助けを呼び、マリアは病院に運ばれましたが間もなく死亡します。亡くなる前、マリアは病室で母親の手を取ると、消え入りそうなか細い切れ切れの声で、伝えました。
「お母さん……どうか……アレッサンドロを……ゆるして……あげて……」
その必死の哀願が、非業の最期を遂げた幼い聖女の遺言となりました。
逮捕されたアレッサンドロは投獄されてからも自暴自棄で、反省の色を見せませんでしたが、ある夜、夢に彼が殺したマリア・ゴレッティが現れました。マリアは、彼が最初に好きになった時のままの無垢な笑顔で、一輪の花を差し出しました。
「わたしは、あなたを憎んでいません。どうか、わたしのぶんも生きてください」