せいせいした
その後、東京に出た佐竹さんに、母から手紙が届いた。
「もう関わることはできません」
そう書かれていた。
「その時は、もう悲しいというより、せいせいしたというのが本音でした」(佐竹さん)
その後、2006年に結婚した佐竹さん。
連絡をとっていなかった母に電話し、実家に残していた幼いころの写真を引き取りたいとお願いをした。
受話器の向こうで、母は怒鳴った。
「そんなものがあっても、ハルマゲドンが来たら意味がないでしょう! 物質に執着して何の意味があるの!」
これが、母と交わした最後の会話である。
現在は夫と子どもと幸せに暮らす佐竹さん。母になった今、自分の母をどう思うのか。
ひとりで生き抜いてつかんだ幸せ
佐竹さんは、
「一生、エホバから出ないで欲しい。目覚めないで欲しいです」
と冷めた思いを話す。
まだ10代で、性交渉を理由に「排斥」され、母との関係を絶ってひとり生きていかなければならなかった佐竹さん。夫と子供は「自分の力で得た家族」で、ひとりで生き抜いてつかんだ幸せだ。
「母がエホバから目覚めてしまったら、誰が面倒を見るのか。私は絶対に嫌だし、私の家族に迷惑をかけてほしくないんです」(佐竹さん)
エホバの証人について、子どもへのむち打ちや進学の自由を許さないなどの虐待行為が取りざたされているが、
「エホバに関しては、特に感情はありません。都合の悪いことには目を背け、妄信しているなんて幸せなんだろうと思います。要は、暇なんですよね」
と思いを語りつつ、こう続けた。
「信教の自由がありますから、何を信じたっていいのですが、それを子どもに強要することは良くないと思います。ですが、カルトなどと言われる宗教はどれを見ても、信じるもの以外を排除しようとしたり、対応するふりをしても受け入れたりは決してありません。世の中には戦っても何も得られないものがあるんだと思います。私のような排斥であれ、自然消滅であれ、宗教をやめた子どもと信者の親が、本当の意味で心が通うことはないと思っています」
(AERA dot.編集部・國府田英之)