母は、佐竹さんのカバンの中身をひそかに調べた。そして恋人との手紙の内容から性交渉を疑い、佐竹さんを問い詰めた。
「たたけばほこりが出ると踏んでいたのか、すごくヒステリックな口調でした。うまく取り繕うことができず、事実を話しました。そのあと、母は長老に電話をして、私の“罪”を告げ口したんです。私を売るような形でしたね」(佐竹さん)
信者が、教団の禁止事項を破った疑いがあるときに開かれるのが「審理委員会」と呼ばれる裁判のような場だ。
「王国会館」で長老たちの審理
信者が集合場所として使う「王国会館」で、2~3人ほどの長老たちが密室の状況で事実を問い詰め、審理する。反省が見られない場合、家族や信者から絶縁される最も重い「排斥」処分が下される。
佐竹さんも長老から、電話で審理委員会にかけることを告げられ、王国会館に向かった。母も同席し、会議室で2人の長老と向き合った。1人は母に告げ口した40代の教師。もう一人は独身の30代男性だった。
「どんな経緯で交際したのか」
「相手はどんな人?」
「初めて性行為をしたのはいつ? 誘ったのはどっちから?」
「今まで何回くらいしたの?」
10代の少女に対し、長老たちから、あからさまにプライバシーに踏み込んだ質問が次々と飛んでくる。
一般の家庭なら、母親としてはこんな質問を聞くのは耐えられないはずだが、佐竹さんの母は、娘が罪を犯したことへの恥ずかしさと怒りに奮えていたという。
「家庭内排斥」状態で会話なくなる
「性行為をした場所や頻度。避妊具を使ったか、どちらが用意したのか。性行為をしていた時、どんな気持ちだったか。これからどうしたいのかなど、あらゆることを聞かれました。ただ、反発する気持ちはその時はなくて、『私のことでお手間をとらせてしまい申し訳ない』という思いでした」(佐竹さん)
審理委員会が終わり、外で20分ほど母と待った。
告げられたのは「排斥」の処分だった。10代の少女にである。
「これから私はどうなるのか。妹とも離れ離れになるのかと、頭がパニックになりました」
母からは、離婚した父と暮らすように促されたが、父は再婚して家庭を持っていたため、佐竹さんはその決断ができなかった。
しばらくは母と過ごしたものの、事実上の「家庭内排斥」となり会話はなくなった。