芸能界を引退した理由
とはいえ、裏では権謀術数が渦巻き、駆け引きや腹の探り合いなどもあるのではないか、と疑ってみたくもなる……。実際どうなのか。
「それも感じたことはないです」
ときっぱり。
「政界についてはまだ当選していないということもあるかもしれないですが、まだ、交渉をするステージにいないんですよね。芸能界のときも特には……。期待された答えとは違って、すみません(笑)」
森下さんは、芸能界引退時に出した文書に、〈もう充分に幸せだったと思う気持ちがこの決断[編集部注・引退のこと]へと導いてくれました〉と書いている。もう芸能界に“未練”はないのだろうか。
「同級生の女の子に比べれば、いろんな経験をさせていただいたのでもう十分だなと思って、ここら辺で幕引きにしようと思ったんです」
特に印象に残っていることは、志村けんさんと「バカ殿様」で共演したことだという。森下さんは、殿様扮する志村さんに仕える腰元(侍女)役で出演していた。同番組はテレビの枠にとどまらず、地方での公演もあったという。そこでの思い出をこう話す。
「志村さんは普段は穏やかで優しい方なんですけど、コントに向かうときの気迫はすごくて、空気がピリッとするんです。舞台の中で志村さんが三味線を弾くくだりがあったんですけど、演奏をしっかり聴かせながらも、笑いも織り込んでいて。演奏の張りつめた感じと笑いで緊張の糸がゆるむ感じの緩急を巧みに生み出していらっしゃって、勉強になることがたくさんありました」