岸田文雄政権が今後5年間で1兆円を投じるとしているリスキリング支援。非正規雇用の人たちが正規雇用で就職できる手立てとなるのか。AERA 2023年11月27日号より。
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政府が発表した経済対策は「転職のためのリスキリング」と、自治体や企業のリスキリング導入を支援する「一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ」代表理事の後藤宗明さんはいう。
政府の支援策では、ITスキルなどの資格取得講座を修了すると、その費用の一部を補助する。補助率や補助の上限を引き上げ、対象となる講座を広げる検討をする。
「政府の狙いは賃上げと、成長産業への人材の流動化です」(後藤さん)
こうした流れを追い風に、個人が受講できるプログラムが増えている。ベネッセグループの人材会社「Waris(ワリス)」(東京都)は、いわゆる非正規雇用の働き手や離職中、正社員の女性のためのリスキリングプログラムを複数開いている。プログラム受講後の就職率は60%を超える講座もあり、多くが正規雇用で就職、または入社後数カ月で正規雇用となっているという。リスキリング事業部ディレクターの藤見慶子さんは言う。
「IT業界では、プログラム修了者で非正規雇用、離職中の方々を積極的に正規雇用で採用する動きが拡大しています」
支援策は喜ばしいが…
IT業界で働いた経験のない非正規雇用の50代で、正規雇用で採用された例があるという。
「非正規雇用の女性の平均年収は200万円台。正規雇用で採用されると、年収は100万円以上上がりますし、福利厚生もあります」(藤見さん)
ただ、中途採用は実務経験を重視する傾向にあり未経験だと採用されるのは難しい。それでも未経験者が就職できるのは、IT業界で続く深刻な人材不足が背景にあるという。