二本樹顕理(あきまさ)さん。発信者が特定できれば、誹謗中傷した人への刑事告訴も考えているという。「誹謗中傷をなくしていきたい」

 性被害告発後の二次被害が後を絶たない。そんな中、元ジャニーズJr.の男性が自殺した。自らも誹謗中傷に苦しむ二本樹顕理さん(40)が胸中を語った。AERA2023年11月27日号より。

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──二本樹(にほんぎ)さんは、故ジャニー喜多川氏からの性加害を告発した後、誹謗中傷による二次被害を受けていると聞きます。

二本樹顕理(以下、二本樹):告発をしたのが今年の5月上旬でしたが、その直後からSNSを通じて受けています。実名で顔出しの告発は、ある程度の誹謗中傷は覚悟していました。しかし、正直、ここまで酷くなるとは思っていませんでした。

一番傷ついた言葉

──どのような誹謗中傷でしょうか?

二本樹:さまざまです。「売名」「お金目的だろ」「タレントになり損ないの負け犬」……。他にも「バカ」「クソ」など人格を否定される誹謗中傷もたくさんあります。「あなたたちのせいでジャニーズ事務所が潰れた」「ジャニーズの名前を返せ」といった、敵対意識も持ちSNSで攻撃してくる人もいます。こうしたものは見たくなくてもどうしても目に入るので、精神的にものすごく落ち込みますし、うつ状態になったりします。

──一番傷ついたのは、どのような誹謗中傷ですか。

二本樹:やはり、ジャニー氏からの性加害を訴えたことに対し、「証言は嘘だ」とか「嘘つき」などと言われることです。声を上げるだけでも本当につらいのに、追い打ちをかけるように誹謗中傷されるのは非常につらいです。

──そもそも、どのような思いでジャニー氏からの性暴力を実名・顔出しで告発しようと思ったのでしょうか。

二本樹:私は13歳の時に旧ジャニーズ事務所に入所し、ジャニーズJr.として1年半在籍しましたが、その間、ジャニー氏から10回程度の性暴力を受けてきました。そのことに対しずっと声を上げたいと思っていたけど、あそこまで神格化されていた人物を糾弾するのは難しく、勇気がありませんでした。しかし、今年3月にイギリスのBBCがジャニー氏の性加害問題を報道し、つづいてカウアン・オカモトさん(27)が声を上げました。若い人が1人で矢面に立ち証言する姿に励まされ勇気をもらったのと同時に、いま自分が出ないと事実がまた闇に葬られてしまうと思いました。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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