キーワード【ロボット支援下手術】
胸腔鏡・腹腔鏡手術の進化版で、医師が手術室内の別の場所でロボットアームを操作しておこなう手術。内視鏡手術では見にくい、届きにくい部位にアプローチでき、より細かく正確な手術ができる利点がある。
内視鏡手術支援ロボットを用いた手術は胸腔鏡や腹腔鏡による手術と同じように、胸やおなかにいくつか穴を開けてロボットアームに固定した手術器具を挿入し、医師が専用の「コンソール」と呼ばれる席に座って操縦しておこなう手術です。体内の様子を拡大して映し出せるため患部が見やすく、一般的な胸腔鏡・腹腔鏡手術より正確で細かい操作が可能となり、手ぶれなども防ぐことができます。現在、日本で最も多く使用されている内視鏡手術支援ロボットはアメリカで開発された「ダ・ヴィンチ」ですが、がんの部位によっては国産のロボット「hinotori」も導入されています。2018年以降、多くのがんでロボット支援下手術が保険適用となり、実施できる病院は増えています。
「とくに、前立腺がんや直腸がんなどはロボット手術の強みを発揮できるがん。狭い骨盤腔でも視野がとりやすく、細かい作業ができるので、神経などを傷つけずに手術できるメリットがあります」(坪井医師)
ただし、ロボット支援下手術と従来の胸腔鏡・腹腔鏡手術の違いは手術をおこなう医師が感じることであり、手術を受ける患者が感じるメリットはほとんどないとのこと。また、現時点では医師に触覚が伝わらないため、トラブルになるケースがないわけではありません。そのため、「医師やその病院が得意としている、やり慣れている方法でやってもらったほうがいい」と坪井医師は話します。
また、患者の状態によっては、ロボット支援下手術が難しいケースもあるといいます。
「手術時間が長くなると合併症が増えることがわかっているので、ある一定以上の時間がかかりそうな場合は開胸あるいは開腹手術が望ましいでしょう」(同)
(取材・文 出村真理子)