キーワード【内視鏡治療/胸腔鏡(きょうくうきょう)・腹腔鏡(ふくくうきょう)手術】

内視鏡治療

小型カメラや電気メスなどを備えた内視鏡を口や肛門、尿道から挿入して早期がんなどを切除する治療法。胃カメラなどの診断機器に切除機能がつき、治療にも使えるようになった。メスでおなかを切開する開腹手術よりからだへの負担が少なく、治療後の回復が早いメリットがある。

胸腔鏡・腹腔鏡手術

内視鏡の一種である胸腔鏡や腹腔鏡を使い、がんの切除などをおこなう治療法。内視鏡治療とは異なり、胸やおなかを数カ所小さく切開して穴を開け、そこから内視鏡を挿入する。外科でおこなわれる手術の方法のひとつ。

 胸腔鏡・腹腔鏡も内視鏡の一種のため「胸腔鏡・腹腔鏡手術」を「内視鏡手術」と呼ぶこともあり、混同しやすいですが、それぞれ違う治療法です。

 内視鏡治療は、先端に小型カメラがついた内視鏡を口や肛門、尿道から挿入し、内視鏡の先端部から電気メスなどの手術器具を出してモニターで体内の様子を見ながらがんを切除します。小さく浅い早期のがんを切除することや、がんによる症状を緩和することを目的としておこないます。

 内視鏡治療で切除できるがんは、食道がん、胃がん、十二指腸がん、大腸がんなど消化器にできる早期のがんと、膀胱がんです。

 消化器のがんの内視鏡治療には、茎のあるがんをリング状のワイヤ(スネア)で切り取る「内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)」、生理食塩水などを注入して浮き上がらせたがんを高周波電流で切除する「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」、がんの周辺の粘膜を高周波ナイフで切開し、がんをはがし取る「内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)」という三つの方法があり、現在もっとも多くおこなわれているのはESDです。

 一方、胸腔鏡・腹腔鏡手術は、おなか(腹壁)を何カ所か1センチほど小さく切開し、内視鏡と、鉗子(かんし)やメスなどの手術器具を挿入し、カメラで映し出される体内の様子をモニターで見ながらがんを切除する方法です。開腹手術とアプローチの方法が異なる外科手術の一つです。「胸腔鏡下手術」「腹腔鏡下手術」と言われることもあります。胸腔鏡・腹腔鏡手術ともに、多くのがんの治療においておこなわれています。最近では、頸部(けいぶ)など体腔のないところでも隙間を作って手術がおこなわれるようになってきています。

 内視鏡治療と胸腔鏡・腹腔鏡手術は、どちらも開胸・開腹手術と比べて術後の回復が早いなど、患者のからだへの負担が小さいというメリットがありますが、異なる治療法であることを理解しておくことが必要です。胸腔鏡・腹腔鏡手術のデメリットについて、坪井医師はこう話します。

「太っている人など皮下脂肪が厚い人は、患部にまで胸腔鏡・腹腔鏡や器具を入れるポートといわれる筒が届かない、あるいは届きにくいことがあります。経験上、BMI=体重(kg)÷{身長(m)の2乗}が30以上の人は、胸腔鏡・腹腔鏡手術よりもアームが長いロボット支援下手術のほうがやりやすいと感じています。また、肺がんの手術などでは術後、肋間(ろっかん)神経痛がみられることがありますが、男性と比べて女性のほうが肋骨の間が狭いため、胸腔鏡手術の影響で痛みがやや強く出ることもあります」

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