「『ラジオ』にはいろんな時期の私がいるんですよね。まず、子供の頃の私。学校では楽しく騒いで、家に帰ると部屋に閉じこもってずっとラジオを聴いていたんです。深夜ラジオを聴くために、目覚ましをかけて、放送時間に合わせて起きたり。あとはラジオでしゃべらせてもらえるようになった自分もいるし、そんな自分をちょっと不思議な気持ちで見ている自分もいて。ラジオでしゃべったり、テレビの歌番組に出たり、こうやって取材を受けたり。今も全部“夢みたいだな”って思うんですよね」

ライブでは“初めての経験”をしてほしい

 aiko自身が〈曲がしっかり届いている〉と実感できるのは、やはりライブ。

「会場に来てくれたみなさんが一緒に歌ったり踊ったりしてくれているのを見ると、自分が作った曲を全力で受け止めてくれてるんだなって。0から1を作ったのは私だけど、みなさんの力でそれが8億くらいになります(笑)。やればやるほどライブが大事な場所になってますね」

 その言葉通り彼女は、一貫してライブに重点を置いている。aikoのライブの特徴は、何が起きるかわからない自由さ。観客とのおしゃべりを楽しみ、予定にはなかった曲を披露し、ときには客席に入って歌うことも。

「お客さんはもちろん、バンドのメンバーやスタッフのみなさんにも、すべてのライブで“初めての経験”をしてほしいんですよね。もちろんセットリストは決まっているし、“次はこの曲”ってわかっているのですが、その日だけの何かを起こしたいなって。いきなり予定になかった曲をやったりするから、音響や照明のスタッフの方は大変だと思います。それでもしっかり応えてくれるし、“こんなこともできますよ”と提案していただいて。客席に降りるときも、じつは本番中に“行っていいですか?”って確認してます(笑)。お客さんの近くにいくことでライブの盛り上がりも変わるし、物理的な距離を縮めることも大事だなと思います」

 また、基本的なスタイルや構成を変えないのも、aikoのライブの特徴であり、多くのリピーターを生み出している理由だ。ツアータイトル(「Love Like Pop」「Love Like Rock」)、開演前のステージに掛けられた赤い別珍の幕。「男子!女子!全員!」という呼びかけや、観客から募ったテーマをもとに即興で曲を作るコーナーなど、彼女のライブには“お約束”がいくつもあるのだ。

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