ジェーン・スーさん(右)と堀井美香さん(撮影/写真映像部・上田泰世)

 AERA連載陣のジェーン・スーさんと、50歳を機にTBSを退職しフリーアナウンサーとなった堀井美香さん。ポッドキャスト番組「OVER THE SUN」が大人気の二人に、女性の働き方と生き方について聞きました。AERA2023年11月20日号より。

【写真】ジェーン・スーさんと堀井美香さんの写真をもっと見る

*  *  *

ジェーン・スー(以下、スー):私たちは今に続く就職氷河期が始まる頃に就活をした世代です。苦労して就職できても当然のように残業があったり、今だったら性差別や学歴差別、ハラスメントとみなされるようなことも起こりうる職場環境で働いてきました。

 そのなかで揉まれ、サバイブしてきた末に今があるので、過去の自分を「よくがんばったね」と褒めたい気持ちはあります。でも、今の若い人たちに、同じことを求めてはいけない。頭ではわかっていても、体に染みついているので、相手がどう感じているか本当のところはわかりません。できるだけブレーキを強くかけるようにしています。

堀井美香(以下、堀井):今とはまるで違う時代を生きてきた感覚がありますよね。とくに私は秋田育ち。地方は東京より考え方が古風です。親はちゃんとした会社に就職して、同じ場所で長く働き、結婚して子どもを産むという生き方を望んでいました。私は性格的に、与えられた課題に70点を出すことが合っていたので、「親世代が良しとする生き方」を生きるのに違和感はありませんでした。でも、そうじゃない人には息苦しかったと思います。

スー:50歳を過ぎると、無理がきかないし、働き方を変えたほうがいいのか、という問いも立ち上がってきますよね。今の私は運の良いことに、楽しくやりがいがある仕事ができる環境にあります。だからこそ仕事量を調整するのが難しいですね。

50歳で新たな段階へ

堀井:私が40歳になった頃、退職してフリーになったり、大学院に進学する先輩がポツポツと現れたんです。20代や30代の転職世代でもなく、定年後でもない、50歳という人生の先が見えたときに、新しいフェーズに軽やかに向かう姿は素敵でした。私が50歳でTBSを退社してフリーになったとき、その残像があって、「みんな50歳を基点にしていたな」と思い出しました。

スー:私たちは「嫌なことでも、とりあえず頑張らなきゃ」という奉公の概念がギリギリまだある世代です。でも、50歳を過ぎたら、それは絶対にやっちゃダメと思っています。

堀井:時代はどんどん変わってきていますよね。今の若い人たちは働き方や生き方の感覚が違うし、もっと自由に捉えていて、うらやましいです。

次のページ