
スー:堀井さんもフリーになって、ものすごく変わりましたよね。作りたい世界がはっきりしているし、スタッフとコミュニケーションを取りながら具現化しています。やりがいと充実を感じるし、本当に“沖に出て”よかったなと思います。
堀井:今はやりたいことがたくさんあって、眠るのがもったいないくらい。更年期なので精神的に落ち込んだり、体力的に厳しいときもあります。でも3年後も健康でいられるかどうかわからない。限られた時間で何ができるか、優先順位を考えて行動しているので、一日の使い方が変わってきました。
スー:自分が損をしてでも会社が回るように手を出したりする人は、フリーが向いているかもしれない。現場に居続けたいなら、下の世代の席を奪わぬよう外に出るという手もある。
堀井さんも会社員のときは、やりたいことがこんなにあると思っていなかったですよね。フリーになった途端、可能性がバババッと開いた感じがします。
ゼロに戻れる覚悟を
堀井:すべてが自分の責任になったことで「一人で働くってこんなに楽しめるんだ」と、ストレスフリーになりました。
でも、フリーになることが誰にとっても幸せとは限らないと思います。会社の中で別の花を咲かせる道もあると思うんです。私の先輩にも放送の現場から離れ、人事やCSRなど、それまでのキャリアとは違う部署で働く方がたくさんいます。その部署で必要な資格取得を目指したり、もう一度、芽を出そうとする姿は自分の励みにもなります。
スー:働き方の違いではなく、向いているか、向いていないか、やりたいか、やりたくないか、だけの話ですよね。
堀井:フリーでも会社員でも、折り返しを迎えた人たちを見て感じるのは、ゼロに戻れる覚悟を持っているかどうか。まったく違うことを始める覚悟があって、それを「楽しい」と前向きに捉えるプラス思考が大事だと思うんです。
スー:職場や家庭で自分の存在意義を感じられるかどうかには二つの要素が関係していて、一つは安心感が得られること。もう一つは、コミュニティーにいる人たちに必要とされていると感じられること。用意された役割を全うしている限りは安心できるし、頼られる充実感もあります。でも、役割に伴う行動や気持ちが自分の本当の気持ちとそぐわないのであれば、幸せを感じられないし、居心地の悪さが残るんです。