分離保育・教育が進む日本
ところが、日本の幼稚園は私立が多く、現在はまだ私立は合理的配慮が努力義務のため、分離保育(障害のある子どもと健常児が別の施設で過ごすこと)を中心としている地域がとても多いです。私は人格が形成される幼児期に障害のある子どもと一緒に生活をする経験を持つことができる環境が、この先の日本の社会を変えるために不可欠なのではないかと考えています。
日本では小学校以降も、障害がある子どもや医療的ケアを要する子どもが、通常級ではなく、特別支援学校や特別支援学級などで学ぶ「分離教育」が一般的です。希望しても通えない場合もあります。小・中学校内に設置された特別支援学級で学ぶお子さんの数はこの10年で2倍に増え、特別支援学校で学ぶお子さんの数も右肩上がりで増えています。
この状況について、2022年秋には、国連の障害者権利委員会が、「障害者権利条約」に基づき、日本政府に対して障害児を分離した特別支援教育の中止などを求める勧告を発表しています。
「家族支援」の視点も
コロナ禍以前に毎年我が家にホームステイに来ていたアメリカの大学生の女の子たちは、障害のある子どもを特別視することなく、医療的ケア児の長女を紹介すると必ず「抱っこして良い?」と聞き、とてもかわいがってくれました。これが、インクルージョンが当然で育った子どもが大人になった姿なのではないかと思うのです。
発表の最後には、この国の課題だと思うことをお伝えしました。医療の進歩により、長女のような医療的ケアが必要な重症心身障害児も18歳を超える時代になりました。子どもの年齢が上がれば保護者や周囲でサポートしている祖父母の年齢も上がり、子どもを支える家族のマンパワーは確実に減っていきます。日本の制度は「障害児本人」に対する支援がほとんどですが、アメリカのように「家族支援」の視点で特別支援学校を卒業後の居場所や保護者が休息するためのレスパイト施設の拡充は急務の課題です。個人の努力だけではどうにもならない部分を、ぜひマクロレベルでご検討いただけることを願っています。
※AERAオンライン限定記事