15分ほどの撮影を終え、やり切った次男。鎧兜を脱ぐとほんのり身体から湯気が立っていた。漢である。「楽しかったか?」「うむ」「なによりでござった」「うむ」……虚空を見つめる次男は一体なにを思う。
後日、現像されアルバムに装丁されたものを見てまた大笑い。記念写真ってのはなかなかいいモノだ。こんな写真は普通の人なら人生で一度撮るか撮らないかだもの。それにしてもソーキュート。
そこそこのお代を払ってせっかく撮った写真も、結局は大掃除や引っ越しの合間に「こんなのあったなー!」と言ってパラパラするくらいだもんな。あれから10年。あの日の「政宗公」は只今、受験生だ。「勉強してんのか?」「あぁ……まぁ……まぁ……な」だと。大丈夫なのか。
覇気がないからまた甲冑でも着せてやろうかと思っている。鎧兜ってのは、身も心も引き締まるんだな。鎧セラピーとか、どうだろう。なんだ、「どうだろう」って。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!