「持った方がよかったかどうか」という質問には、子供の成長を見るのは楽しみですが、厳密な意味では答えられないと思います。だって、「持ってない場合」と「持った場合」を同一人物としては比較できないからです。
ちょうど、「結婚してよかったかどうか?」という質問と同じでしょう。「結婚して経験したこと」と「結婚しなくて経験したこと」を同時に比較することはできないのです。
また、「大きな喜びをくれる対象は、同じぐらい大きな哀しみをもたらす」と僕は思っています。恋愛も子育ても同じですが、相手のことを愛しく思い、相手が大切な存在になればなるほど、大きな喜びを相手からもらえますが、同時に、相手のいろんなことに苦しむようになるのです。相手に関心がなければスルーできるようなことも、相手が大切だからこそ、胸に突き刺さるのです。
子供が大好きだからこそ、子供の行動や言葉に傷つくということです。
ですから、「子供を持ってよかったかどうか」を、「論理的に正しく」判断することは難しいと思います。
あんこうさん。僕とあんこうさんと夫の違いは、年齢だと思います。29歳のあんこうさんと夫には、まだまだ、迷ったり考えたりする時間が何年もあると僕は思います。
子育ては「お試し期間」とか「返品」とかができないので、まったく正解の分からないまま進んでいくしかないものです。
結論は、夫婦で話し合って出すしかない。それが正解かどうかは誰にも分からない。誰にも分からないんだから、間違っているとか正しいとか、言えるものではない。誰にも分からないんだから、「子供を持つ・持たない」の絶対に正しい根拠とか理由があるわけじゃない。
そう思って、僕は子供を持ちました。
あんこうさん、どうでしょうか。
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