本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)
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 正直わたしは避妊せず(直接的な話ですみません)天命に任せるくらいでもいいかなと思っているのですが、夫はきちんと考えて結論を出したいようです。

 夫の意見は今のところ、

・育てる自信がない
・今のところ2人で暮らすのが楽しいので変えたくない気持ちがある
・子どもがいたら可愛いだろうなとは思う

 といった感じです。責任を負ったらしっかり果たそうと頑張ってしまうような性格なので、事前に責任を負う選択肢には消極的になる傾向にあるように思います。
 何事も自己責任と言われるような最近の社会を見ていると、はっきり「産みたい!」と言えない時点で産むべきではないのかな、とも考えてしまいます。

 2人で話し合って考えていくしかないのだとは思っているのですが、鴻上さんは出産・育児についてどのようなお考えをお持ちかお聞きしてみたいです。

 よろしくお願い致します。

【鴻上さんの答え】
 あんこうさん。いろいろと考えてますね。「産みたい理由」「産みたくない理由」の一覧と「2人で話し合って考えていくしかない」という文章を見ていると、僕がこれ以上、何か言う必要はないと思えます。

 ただ、「鴻上さんは出産・育児についてどのようなお考えをお持ちかお聞きしてみたい」ということですね。

 あんこうさんの「ちゃんと育てられるか不安」というのも、夫の「育てる自信がない」というのも、とてもまっとうで自然な感情だと思います。

「任せろ! 子供を育てるのに絶対の自信があるんだ!」なんて思っている人がもしいたとしたら(まあ、いないと思いますが)、よっぽど想像力がないか、単なるバカでしょう。

 一時期、若者が犯罪を犯すと「親の育て方が悪い」という言い方がさかんにされました。多くは男性の政治家や評論家さんの言葉でした。

 僕はこの言葉を聞くたびに、「ああ、子育てに関わらなかったから、言えるんだろうなあ」と感じました。

 すべてを妻に任せて、自分は仕事に打ち込み続けた結果、「育て方」に対するリアリティがまったくないから言えると思ったのです。

「ちゃんとした子供に育てよう」と思って「ちゃんとした子供に育つ」なら、「子育て」に苦労はありません。でも、「ちゃんとした子供に育てよう」として、「ちゃんとしない結果」になることも「子育て」には普通にあります。相手は人間なので、インプットした通りに結果が出るなんて保証はないのです。

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