米国の心理学者が1980年代に行った研究では、虐待が連鎖する割合は33%。また、虐待は親が貧困状態にあることが多く、生活に余裕がないため苦しみが子どもに向かうこともある。
丘咲さんの両親も、その親から虐待を受けていた。母は家が経済的に貧しく、学校にもほとんど行かせてもらえなかったという。
いま丘咲さんは、児童虐待被害者を支援する一般社団法人「Onara(おなら)」の代表を務める。そこでは、大人になるまで里親や児童養護施設など「社会的養護」につながることなく家の中で孤立したまま生き残った虐待サバイバーの伴走支援などを行う。そうしたサバイバーたちを「見えなかった子どもたち」と呼び、公的支援につなげる政策提言に向け準備も進めている。
丘咲さんは、虐待の後遺症に苦しんでいる人に、「少しずつでもいいから、自分を認めてあげてほしい」と言う。例えば、朝時間通りに起きることができたとか、どんな小さいことでもいいと。また、「頼れる先をいくつも持ってほしい」と話す。
「苦しくて声を上げても、傷つけられることもたくさんあると思います。だけど、声を上げ続けたら、味方になって助けてくれる人はきっといます。それは、支援団体かもしれないし、SNSの中かもしれません」(丘咲さん)
そして、「今すぐには受け入れられないかもしれないけれど」と前置きした上で、こう呼びかけた。
「虐待を受け今は生きる価値がないと思っている人も、ただ生きているだけで生きる価値があります。私は、そう伝え続けたい」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年11月6日号より抜粋