「虐待サバイバー」と呼ばれる人をご存じだろうか。虐待やDV、性暴力などの被害を生き抜いた人をそう呼ぶ。サバイバーの苦しみは被害に遭った時だけでなく、「その後」も続く。生きづらさ抱えて必死で生きる当事者の声を聞いた。AERA 2023年11月6日号より。
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子どもへの虐待は増えている。
2022年度に全国の児童相談所が対応した虐待相談は21万9170件(速報値)で、過去最多となった。前年度より5.5%(1万1510件)増え、統計開始から32年連続で過去最多を更新した。
丘咲つぐみさん(48)も、物心ついたときから両親から心理的虐待や身体的虐待を受けてきた。
「この苦しさが一生続くと思っていました」
父(70代)からは罵声を浴びせられ、特に母(70代)からの虐待は壮絶を極めた。小学2年生の時、自宅の台所で鍋の中の熱湯を肩からかけられた。「熱い、熱い」と泣き叫ぶ丘咲さんのそばで母は、
「お前がいるから私の人生めちゃくちゃになるんだ」
「お前は私の奴隷になるために産んだんだ」
などと罵声を浴びせ続けた。
高校生になると摂食障害を発症し、20歳前には複雑性PTSDやうつなどの症状も出た。同時に、激痛が伴う脊髄の難病にもかかった。
虐待は、結婚して実家を出た23歳ぐらいまで続いた。そして、生きづらさに苦しめられ、「消えてなくなりたい」という感覚をずっと持っていた。
その苦しさが一気に表面化すると、舌をかんだり、自宅で首をつったり、マンションの5階から飛び降りたり、自殺未遂を繰り返した。
精神科の診断を受けてきたが、「希死念慮はなくならない」と言われた。ただ、43歳ぐらいの時、あるメンタルトレーナーと出会い、生まれて初めて「生きてみたい」という感覚を持つことができた。自分を否定しないで、自分がやってきたことを一つ一つ認めてあげることで気持ちが楽になり、驚くほど状態がよくなっていったという。
今、摂食障害や複雑性PTSDは、完全になくなる「寛解」まではいっていないが、ずいぶんよくなった。希死念慮もこの1年近く出ていない。
「誰より幸せな人生を送っていると感じながら生きています」
と、笑顔で話す。
また、虐待は連鎖するという。