7月のウチヒサル村は日中こそ30度を超えるが、標高約1400mに位置していることもあり、朝晩や雨が降ると冷え込む。肌が焦げ付くような日射のある時でも、洞窟住居に入ると長袖が必要なほどひんやりとしている。逆に冬は零下25度まで下がるが、住居の中は暖かいのだそう。なんとなくムーディーで、フォトジェニックで幻想的な雰囲気がある。
筆者も実際、洞窟住居の中で3週間を過ごしたが、静かで思った以上に快適だった。窓の数が通常の住居より少ないので、バスルームの換気の面を気にしていたが、洞窟の岩自体に通気性があり、カビが生えたり、湿気が気になったり、ということはなかった。
ただデメリットとしては、部屋によって窓がないので日中でも電気が必要になること、寝ていると時たま天井から土のかけらが降ってくることだ。洞窟から出る塵(ちり)などがたまりやすいため、掃除もこまめにする必要がある。
洞窟住宅の工事現場にもお邪魔し、どのように洞窟を掘っているかその様子を見せてもらった。洞窟を掘る際に使用されている機械はドイツ製のボッシュで、長い歯のドリルを使ってどの深さまで掘れるかを確認した後、機械や斧のようなものを使って表面を削っていく。気の遠くなるような作業だが、大型のホテルなどでも約2年で完成するのだそう。
洞窟住居を求めて移住するヨーロッパ人
マイケル氏は、数年前にたまたま売りに出された洞窟住居に出会い、購入。今年から本格的にこの地に移住したアイルランド人男性だ。実はカッパドキア周辺は、リタイア後にセカンドハウスを持つヨーロッパ人が結構いる。英語の教師として世界中で暮らした経験を持つマイケル氏。人生の最期にこの土地を選んだ。