他にも1987年は、オペラの佐藤しのぶさん、シャンソンの金子由香利さん、さらには宇崎竜童さん率いる竜童組などが初出場し、紅白好きの間では「紅白の迷走が始まった年」と呼ばれていたりもします。しかし皮肉にも、NHKが「変革」の目玉として白羽の矢を立てた「昴」が、ともすればそのまま失われていたかもしれない「紅白らしさ」を、より強固で盤石なものにしてくれたと言えるでしょう。
また、遅ればせながら紅白が掲げた「ニューミュージック宣言」も、「谷村新司初出場」を皮切りに脈々と実現されていきました。翌88年にはアリスの盟友である堀内孝雄さんが初出場を果たし、90年にはさだまさしさんが10年ぶりに出場。その後も長渕剛さん(90年初出場)、河島英五さん(91年初出場)、南こうせつさん(92年初出場)、イルカさん(92年初出場)、海援隊(93年に13年ぶりの出場)、小椋佳さん(94年初出場)と、遂には吉田拓郎さんの初出場(94年)へと繋がります。
かつての「ニューミュージックは紅白に出ない」という常識を覆す大きなきっかけを作った変革者。そして、時代の流れとともに迷い出していた紅白歌合戦を、今一度あるべき姿に立ち返らせた救世主。
余談ですが、「昴」はリリース直後からじわじわとチャートを上昇し、オリコン最高2位を記録しました。
そんな「昴」の1位獲得をこのときに阻んだのが、もんた&ブラザーズの「ダンシング・オールナイト」でした。80年代の幕開けを彩った2つの名曲。それらを歌った男たちが奇しくも相次いで星となりました。
間もなく忘年会シーズンですが、今年は心おきなく「昴」を熱唱するオジ様たちが巷に溢れることを期待しています。