性犯罪は、初犯を防ぐのが困難といわれる。特に子どもへの性暴力は、表面化しにくく第三者が気付きにくい。再犯防止は喫緊の課題だ(撮影/写真映像部・高野楓菜)
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 子どもへの性犯罪は常習性があるといわれる。性犯罪の再犯率は約14%だが、データの実数よりも多くあると考えられている。一体なぜか。AERA 2023年10月30日号より。

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 15歳の時からおよそ4年間、通っていた札幌市内の中学校の男性教員から、繰り返し性暴力を受けた。

「男性と付き合ったこともなく、性に対してまっさらで全く土台のない子どもが、大人からの性暴力に気づくのは無理です」

 石田郁子さん(46)は、そう静かに話す。

 最初は中学の卒業式前日だった。男性教員に誘われ、市内の美術館に行った。当時、この教員は28歳。美術館で石田さんが腹痛を訴えると、車で教員の自宅に連れていかれた。部屋でくつろいでいると、教員は「実は好きだったんだ」と言い、キスをしてきた。

思い通りに支配したい

 何が起きたのかわからなかった。この教員への恋愛感情は一切なかったが、教員が言うことは正しいと信じ込み、交際とはこういうものかと思っていた。こうして関係は、教員が別の恋人をつくる19歳まで続いた。

 子どもへの性犯罪が後を絶たない。今年8月、大手進学塾「四谷大塚」の元男性講師(24)が教え子の女児(当時9)を盗撮したとして逮捕された。翌9月には、東京都練馬区の中学校の現職校長(55)が、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕され、社会に衝撃が走った。

 子どもへの性犯罪は常習性があるといわれる。法務省の研究機関「法務総合研究所」の調査では、性犯罪の再犯率は13.9%。だが、長年、性犯罪加害者の再犯防止教育にあたる精神保健福祉士・社会福祉士で『「小児性愛」という病─それは、愛ではない』の著書もある斉藤章佳さんは、この値は「氷山の一角だ」と指摘する。

「特に子どもへの性犯罪は、子どもは被害を被害と認識できなかったり、『性的グルーミング』と呼ばれる行為で加害者に巧妙に手なずけられたりするため、犯罪としてデータに表れない『暗数』が実数よりはるかに多くあると考えられます」

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