コン・ダーシャン/1990年、中国山東省生まれ。北京電影学院の大学院の卒業制作として制作した「宇宙探索編集部」で国内数々の賞を受賞(撮影/伊ケ崎 忍)
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 中国で大ヒットを記録した、UFOをめぐる奇想天外なロードムービー「宇宙探索編集部」。監督のコン・ダーシャンに中国映画界の現在を聞いた。AERA 2023年10月30日号より。

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 いま中国で最も期待を集める若手監督コン・ダーシャン(33)。映画「宇宙探索編集部」は大学院の卒業制作として企画したが、もともとUFOに興味があったわけではなかった。

「たまたまテレビの報道番組を見ていたら、山東省のある村のおじさんが『宇宙人を捕まえた』と真面目に話していたんです。見ればシリコン製の人形だとわかるのですが、彼は『これは宇宙人だ!』と真剣に話していた。この真面目な感じを映画化したら面白いのでは?が発端でした」

最初は岩井俊二監督

 映画はナンセンスな笑いに溢れつつ、じんわりとした後味を残す。ロイ・アンダーソンやアキ・カウリスマキ、中島哲也、宮藤官九郎や安藤桃子といった監督たちに影響されたという。

「高校生のころ最初に出会ったのは岩井俊二監督です。中国ではNetflixは見られませんが、ネット上にさまざまなサイトがあり、世界中のどんな作品でも観ることができるんです。クドカン作品では『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』が好きです。スタイリッシュでロマンチック、仏教の真髄もあって人物描写も見事。監督としてのスタイルを持っている方です」

 実はいま中国Z世代は相当に映画を観ているらしい。

「年間数十本しか観ない私など比べものになりません。みな年間何百本も観ています! 彼らは2005年にスタートし登録者数1億6千万人を超す映画サイト『Douban(豆瓣)』で映画評を語り合い、アート映画(文芸映画)を定期的に上映する『中国映画資料館』に通って映画談議をします。中国語でファンを指す『迷』と映画を指す『影』から『迷影文化』と言われます」

 たしかに近年、中国映画界は大きな変化を遂げている。19年に制作された中国初のSF大作映画「流転の地球」の大ヒットもそのひとつだ。

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