3年生からは大手旅行会社の協力を得て、海外の観光業に触れるインターンプログラムが予定されているなど、視線は海外にも向けられている。また、今年度は文部科学省の地方国立大学の定員増事業にも唯一選ばれ、24年度から35人増の55人になることも決まっている。
北海道ならではの特性
地域の特性を生かし、地域の活力源にもなる国公立大学。宇宙工学で知られる北海道の室蘭工業大学もそのひとつだ。
「ロケットと言えば、国内では種子島が知られていますが、打ち上げ場があるだけでロケットは船で運んでいる。実験も打ち上げも全てできるのは、広大な土地がある北海道ならではです」
と話すのは、同大航空宇宙機システム研究センター長の内海政春教授だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)出身で、17年に同大に着任。19年から地元企業であるインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)とともに超小型人工衛星を打ち上げるための研究と開発を進めている。内海教授は、
「畑作や稲作の状況を把握したり、宇宙からインターネット通信ができるようになるなど、小型人工衛星の需要は非常に伸びしろがある」
と解説。21年には、大阪府立大学(現・大阪公立大学)と共同開発した超小型人工衛星「ひろがり」が、宇宙空間で太陽光発電パネルに模したプラスチック板を地球からの操作で広げることに成功している。毎年、宇宙への志のある学生が首都圏からも数多く集まってくるといい、
「世界に羽ばたく人材を育てるとともに、国際競争力のある大学でありたい」
と目標を語る。
だが、全国各地にある国公立大を見渡してみると、冒頭の金沢大や室蘭工大のように多くの学生から人気を集める好例は、ごくわずかだ。中でも、知名度のない地方の国公立大は苦戦を強いられているケースが目立つ。そんな中、独自の活路を見いだしているのは、鳥取大学だ。
「地方の国立大生は『出身県+隣接県』で就職する者が多い。鳥取大も7割が県外就職です。砂に埋もれて、抜け出せないなんてことはありませんから」
高校生の保護者向けセミナーで、そう言って場を和ませたのは、同大入学センターの森川修教授。17年から、「地方の国公立大の魅力」と題したオリジナルのリーフレットを作成し、様々なデータを元に図や絵を用いて、メリットをわかりやすく解説してきた。