藤井聡太八冠は「秀才にして天才」型のない面白さもある　スポーツジャーナリスト・二宮清純さん

　将棋史を塗り替える前人未到のニュースに、ファンは大いに沸いた。各界の愛好家はいま、何を思っているのか。スポーツジャーナリスト・二宮清純さんに聞いた。AERA 2023年10月23日号より。

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　棋士は皆素晴らしい将棋の才能の持ち主ですが、大まかに「天才」と「秀才」に分けられると感じます。誰も思いつかないひらめきをする天才と、理詰めで正解にたどり着く秀才。たいていどちらかですが、藤井さんは両方の性質を持っています。それも恐ろしく高いレベルで、です。デビュー当初からいずれタイトルを取るだろう、三冠や五冠くらいはいくだろうと期待していました。しかし、これほどの速さで八冠制覇まで駆け上がるとは思いもしませんでした。「規格外」としか言えません。

　藤井さんの将棋の面白さは型がないところですね。先行逃げ切りもできるし、終盤のねじり合いで押し勝つこともできる。タイトル戦のような持ち時間の長い対局も、早指しでも強く、あらゆる戦型で戦えます。「この型に持ち込んだら強い」という棋士は大勢いますが、藤井さんはどんな型でも強い。その点は相撲の大鵬に似ているかもしれません。