イスラエル南部アシュケロンで、ガザ地区から発射されたロケット弾が直撃した現場からイスラエル警察官の誘導で避難する家族=10月7日(写真:AP/アフロ)
この記事の写真をすべて見る

 ハマスとイスラエルとの軍事衝突で、イスラエル国内はどのような状況なのか。攻撃の応酬が激しさを増す中、和平への道は──。国立ヘブライ大学教授に聞いた。AERA 2023年10月23日号より。

【写真】オンラインのインタビューに応じるニシム・オトマズキン氏

*  *  *

 10月7日に、パレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」が、イスラエルに大規模攻撃を仕掛け、4日経つ(執筆時点)。今、イスラエル国内はどうなっているのか。イスラエル在住のニシム・オトマズキン氏に聞いた。

「エルサレムの中心部へはミサイルの攻撃はありません。電気、水道、ガスといったインフラも大丈夫です。しかし夜中にもサイレンが鳴り、街は昼間でも車の通りが少なくなっています。スーパーやコンビニは開いていますが、レストランなどは閉まっています。大学は10月から新学期でしたが、何百人もの学生が軍隊に招集され、私たち教員は家で仕事をしています。雰囲気は、とても暗いです」

心配はヒズボラの動き

 今回のハマスの攻撃については「これまでと違う」と言う。

「2007年にハマスがガザを実効支配してから、イスラエルにロケット弾を打ち込むことは何度もありました。しかし、今回は違います。ジェノサイドです。ハマスは、イスラエル南部のユダヤ人コミュニティーを容赦なく攻撃し、破壊しました。さらに約130人の民間人を人質として、ガザに強制的に連行しました。父親が撃たれた後、母親と2歳と4歳の娘が連れていかれた家族もいます。かつての『イスラム国(IS)』の残忍な行動と同じ残虐な行為です」

 イスラエル側の報復が続き、双方の死者は2200人を超えた(11日現在)。攻撃の応酬は激しさを増し、イスラエルはハマスを支援してきたイランとも戦争を始めるのではないか、との臆測も飛んでいる。

「そういう心配があるのは確かです。ただ、バイデン米大統領が10日に行ったスピーチでは、イランが進出してこないようイスラエルへの支援を強調しました。心配なのはレバノンのイスラム教シーア派組織『ヒズボラ』の動きです。ヒズボラはイスラエル北部の駐屯地に砲撃を仕掛けました。ヒズボラはハマスより大きい組織で、ミサイルなどの武器も大量に持っています」

人質解放が第一の願い

 ヒズボラが本格参戦すれば、イスラエル国内も戦場になる懸念もある。

次のページ