しかし、私たち全員が考えなければならないより深い問題がある。人々の善意がテロリストや大量殺人者に利用されることがあるということだ。例えば、パレスチナ難民を助けたいという寛大で善意の日本人から寄付された土嚢袋は、ハマスによってイスラエルへの侵攻を隠すために使われた。土嚢袋の中には、「パレスチナ難民に自由に配るための日本人からの寄付」と書かれているものまであった。日本や世界中の人々の善意と寛大さが、ハマスの大義名分のために使われたのだ。

ハマスが人道的扱いを過度に要求する理由 背景に第二次世界大戦の苦い記憶

 第二次世界大戦の恐怖の後、欧米やアジア、特に日本では、多くの人々が戦争そのものを悪として糾弾し、平和、和解、人権を強調する崇高な世界観を採用した。紛争中に罪のない市民を守ることは、利己的な国家利益や軍事的優位を求める些細な野心よりも最優先されるようになった。そのため、ハーグ条約とジュネーブ条約に基づく武力紛争法は、「国際人道法」(IHL)と改名された。以前は、武力紛争法は戦争の惨禍を制限するための相互取り決めであるとされていた。たとえ国同士が遺憾ながら戦うことがあっても、一方はライバルの国民や捕虜を保護すべきであり、逆もまた然りであった。しかし第二次世界大戦後、各国が戦争法に違反するのを防ぐため、国際裁判所はこれらの人道法の多くは慣習的かつ無条件的なものであると裁定した。たとえ敵国が同じことをしなくても、私たちはその国の民間人を保護すべきなのである。

 戦争法違反が比較的軽微だった時代には、少なくとも部分的には機能していた。しかし、ここ数十年、殺人テロ組織はこのルールを自分たちに有利なように利用してきた。ハマスがイスラエル南部で行ったように、彼らは民間人を虐殺し、自分たちの都合のいいように戦争のルールを無視し、罪のない民間人の陰に隠れ、善意の人々の人道的感情を享受することで、報復から身を守ることができた。

 イスラエルは、その歴史のほとんどの期間、存亡の危機に直面してきたため、国際人道法違反を繰り返し非難された(※編注:ヨルダン川西岸のイスラエルによる入植活動は国際法違反とされ、日本政府は即時かつ完全に凍結されるべきとの立場)。残念ながら、こうした非難が真実のケースもあった。イスラエル軍の歴史を通じて、遺憾な残虐行為があり、その多くは処罰された。しかし、ハマスのような組織との戦争で、ハマス側が「人道的」扱いを過度に要求することは、罪のない人々や難民への人道支援を装って、そのような集団が武装することを許す盾となった。

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イスラエル軍は人間性を保持する でも…